今回はDIR EN GREYのフィフスアルバム"Withering to death."についてご紹介します。
これまでのアルバムの紹介記事はこちらからどうぞ!
Withering to death.について
発売日 2005年3月9日
VULGARという新たな幕開けを世に提示し、それから一年半というスパンを経て放たれた本作。
前作は内に沈み込んでいくような作品であるのに対し、こちらは外へと向かっていくような鋭利な印象。
音もVULGARよりエッジのきいたソリッドでシャープな作りになっています。
弦楽器のチューニングはVULGAR同様、ドロップDもしくはドロップC#仕様。
前作では京のクレジットがProphetとなっていましたが、今作ではvoiceに変わっています。その辺も当時のインタビューで「ただの声」だからvoiceでいいじゃん?みたいな話をしていた記憶が・・・。
今作を境に、メタルフェスなどの出演に積極的になっていき、海外公演を行うようになったのもこの頃から。
そんな彼らの活動の転換期を支えた楽曲たちが収録されています。
初回盤は特殊パッケージが使用されて、アルバム発売を記念したTシャツ販売のチラシが挟まっていたりします。
ちなみにぼくはこのTシャツを買いました!(チェリーを持った手がイラストされてるやつで中々シャレオツなんですよ)
Withering to death. 収録曲レビュー
1. Merciless cult
一曲目に相応しいイントロ。
cultという単語示す通り、儀式的な何かが始まるようなイントロがゾクゾクさせます。
楽器隊のユニゾンが気持ちよく、爆音で聞いた際にはドシっと脇腹に刺さります!
2回目のAメロ裏で鳴っているアルペジオ的なギターが個人的には好き。
2. C
ライブで盛り上がり必須のキラーチューン。
Merciless cultからの曲間が素晴らしいの一言!
アルバムを初聴きしたときのこの曲のインパクトを今でも覚えています。
Aメロの縦ノリを終えてから、Bメロの広がり、そして爆発するサビ。最高ですね。
疾走感があり、聴いていて痛快でメロディも非常にキャッチー。
詩の内容は京の心の底の本音?と捉えられるような部分が印象深いです。
3. 朔-saku-
先行シングル。
3分という短い曲時間ではありますが、DIR EN GREYが濃厚凝縮された曲といえばしっくり来るでしょうか。
DIRってどんなバンドと聞かれた際に、この曲を聞かせればDIR像というものが大体掴めるかなと。
リリースからだいぶ年月が経っていますが、個人的には今も廃れることのない名詞代わり的なうちの一曲。
アルバムのここまでの最初の三曲の流れが本当に最高に尽きます。
朔-saku-というタイトルの由来は「毎日太陽が登るけど、それを前向きに捉えるか後ろ向きに捉えるかは人それぞれ」という趣旨の発言を当時のインタビューで語っています。
歌詞の中で「」と示された部分は、本作発売前に発売された京の詩集「前略、お元気ですか。最果ての地より名も無き君に愛を込めて・・・」の中で確認することが出来ます。
4. 孤独に死す、故に孤独。
これまでにはないタイプの不思議な曲。
Bメロ裏でなっている単音でザクザクと刻まれるギターリフの裏で一瞬流れる、ニュルニュル?したDieの単音ギターが耳に残ります。
一時期はライブ中にこの曲で京は自傷行為を行うことで波紋を呼びました。
5. 愛しさは腐敗につき
歌を前面に押し出したミディアムなナンバー。
DIR EN GREY流の歌謡的アレンジ?が楽しめます。
京の低音、中音域が堪能できる曲。
詩からは悲しいお伽話のような情景が浮かびます。
個人的にはベースラインがツボ。
6. JESUS Christ R'n R
金属音的なシンセから始まるファンク要素を取り入れたナンバー。
こちらの詩も、朔同様に詩集「前略、お元気ですか。最果ての地より名も無き君に愛を込めて・・・」の中で確認することができます。
Ominous communicationと歌っているファルセットボイスがキレイです。
危険な香りの中に潜む美しさっていうんですかね、そんな狂気を感じる曲。
7. GARBAGE
疾走感のあるパンキッシュなナンバー。
Dieと薫のギターリフの掛け合いが気持ちいい。互いに違うリフを刻むことによって疾走感が出ています。
リフの中で所々に入るキメが格好良いです!
京の多様なシャウトと多重人格?ヴォイスが炸裂。
こちらの詩も断片的に詩集「前略、」の中で見られます。
8. Machiavellisme
Toshiya原曲。
先行シングル「朔-saku-」の一曲目として収録され、B面という概念に逆らった異質さが当時は新鮮でした。
Dieのギターのカッティングがめっちゃ格好良く、聴いていて爽快。
曲名の由来はイタリアの思想家ニッコロ・マキャベリのマキャベリズムから。
京曰く、どんな手段を使ってでも己の信念を貫き通すことが詩や曲に反映されているとのこと。
Shinyaのドラムとしては珍しく、割とシンプルなビートに徹している印象を受けます。
9. dead tree
本アルバムの象徴的な一曲。
アルバムジャケットに枯れ木が写っていることからも、このアルバムにおいての核と言っても過言ではないはず。
乾いた薫のアルペジオフレーズがWtiheringのモチーフ(枯渇、枯れ木)と合致します。
サビの波打つようなリズム隊のグルーブ、ギターのアルペジオが詩と呼応し、「何故?何故?繰り返される」というフレーズを際立たせています。
個人的には、彼らが世に問いかける「痛み」というテーマが色濃く反映されている曲のうちの一つ。
このアルバムの中では一番生々しい楽曲という表現が的確。
10. THE FINAL
前作、VULGAR発売後にまず最初にリリースされたシングル。
この曲、メロディがとてもキレイで、エモい(すいません、こんな表現で・・・)です。
このエモさ故に、海外ファンの間でのこの曲の人気は一段とあるのか!?
まず、当時オフィシャルサイトで視聴したときに、あまりの美メロに「なんじゃ、こりゃ」と当時中学3年生のぼくは腰を抜かしました。
そして、当時、THE FINALのシングル発売日は自分の中学卒業式の日と同じだったため、「俺の中学生活もこれでファイナルだぜ!」と勝手に重ねて喜んでいたいという、なんとも笑える痛ましい思い出があります。。
個人的にはVULGARという章を締めくくるシングルと当時は思っていたので、アルバムに収録されことを知ったときは少し驚きました。
後にミニアルバム「THE UNRAVELING」にて再録。
11. Beautiful Dirt
ライブ向けパンキッシュナンバー。
ここからアルバムは後半へと向かっていきます。
詩は皮肉めいていて、誰かを非難しているようにも見受けられます。
「自分を棚に」と最後に投げ捨てる皮肉めいたう部分が実に京らしい。
発売時のインタビューで京は「あえて、こういうハイトーンを使っている」と言っています。ダサかっこいい的なニュアンスだったかと。
曲構成はこのアルバムの中では断然シンプル。
後にベストアルバム「VESTIGE OF SCRATCHES」で再録。
12. Spilled Milk
こぼれたミルクと題された本曲。
鐘の音のようなシンセ音が良い感じに不穏さを煽っています。
曲の構成も凝っていて忙しく、これぞDIR!と言わんばかりの展開。
詩の内容はミルクをアレに形容しているのでしょうか。
「産まれない事実」とある辺り、合点がいきそうです。
発売当時、インタビュアーがこの曲に際して「子どもでも出来たんですか!?」と不躾な質問を投げかけたのが今も記憶に残っています(笑
ギグスだったかな・・・うろ覚え。
13. 悲劇は目蓋を下ろした優しき鬱
詩はレクイエム的な内容になっています。
というのも当時、京の元に「DIR好きな友達が亡くなった」といった趣旨のメッセージがファンから届いたのが発端だと当時のインタビューで語っています。
淡々と刻まれる12弦アコギの音色が美しく、煌めくようなギターのアルペジオが詩中の「紺碧」とリンクするのは自分だけでしょうか。
CDでは優しく語りかけるように歌っていますが、感情爆発的に歌うのもライブならではの魅力。
夜中に海でも眺めながら何も考えずに聞きたい、そんな曲。
14. 鼓動
シンセサイザーの打ち込みから始まるアルバムを締めくくる最後の曲。
孤独な人間が描かれた楽曲と言いましょうか。
聴きやすいんだけど、決して一般的には傾倒しない。
ドラマティックな楽曲展開の中にDIRの美学?を感じます。
ミュージックビデオは「朔-saku-」の続編に当たります。
間奏でのワウのギターの掛け合いが新鮮。
歌の終わりが「おはよう」で終わるのが個人的に凄く好き。
この曲が終わると、余韻も何もないままCDがキュッと音を立てて止まるのが印象的でした(伝わってくれ!)
前作のVULGARは「バイバイ」で終わってギターの余韻があったのですが、今作ではスパッと止まるので(笑
Withering to death. 総評
VULGARという佳作を経ての今作は、リスナーの期待を裏切ることなく、これまでのDIR EN GREYを十分に発揮した集大成。
前作が統一感のあるカラーの楽曲たちが集まっていたのに対し、今作はバラエティに富んだ仕上がりになっています。
しかし、散漫になることなく、更に彼らの持つポテンシャルの高さを世に知らしめました。
このアルバムをリリースする前に、京は個人で詩集を発売しているので、いくつかの楽曲の詩はその中に収録されていたものと一致もしくは酷似しているのも特徴。
まとめ
本作以降、徐々にDIR EN GREYは海外でのライブを行うようになり、本作は初めて海外でリリースされたデビューアルバム。
海を越え、欧米に彼らの存在が世に確立されて認知されるようになった神髄が詰まっていると言えます。
次アルバムTHE MARROW OF A BONEでは、激しさに更にエッジをかけ新たな方面へとアプローチを開始。
以上、Wtihering to death.のレビューでした。