【その4】フランス私小説を書くことにした。【ズッカ自伝】
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渡仏目前

 

二日後、リモワのスーツケースが郵送されて自宅に届き、買ったばかりの新品のスーツケースを家族に見せびらかした。

みんなが口を揃えて、「キレイだ。品がある」と口にする。

ぼくの選択はやはり正しかったことを再確認し、このスーツケースをとても誇らしく思った。

これなら家族の誰が使っても恥ずかしくないだろうし、将来自分に子供ができたとき、孫ができたときまで使ってもらえるだろうとも思えた。

確かに値は張ったが、長きにわたって使えるのならば、そんなに高い買い物ではない。

最初はピカピカのスーツケースが旅行の過程で徐々に傷が付き、段々と味を出していく。

それはまるでヴィンテージの年季の入ったギターをぼくに連想させた。

このスーツケースはこれから相棒となって、ぼくとともに世界を旅するのだ。

それから、近づくフランス旅行に向けて、ぼくはフランス語の本を買ってみた。

しかし、最初に買ったのは清岡智比古の文法書。

この本を買った理由は単純で、アマゾンで「フランス語」と検索をしたら、この本が一番上に出ていたから。

パラパラとめくって見るが、全然頭に入って来ない。

ぼくはここで、買う本を間違えたことを悟った。

それもそのはず、通常文法書には旅行で必要とされる会話に重きは置かれていない。

ぼくは、手軽なことりっぷフランス語を再度購入し、それをフランスに持っていくことにした。

初海外ということで、ぼくはとても思い上がっていた。

できる限りオシャレをしてフランスの街を歩きたくて、衣類の選定に悩んだ。

次回の就活に向けて新しく調達したスーツを持っていくことにした。

スーツを着ながらパリの街を歩くとぼくは決めていた。

旅行前日の夜。なぜだかわからないが、あまり良く寝付けなかった。

空港への集合時間は夜の八時。

フライト当日の午後に地元を出発し、強い日差しを感じながらぼくは初めて成田空港へと足を運んだ。

もう、このときからすでに「旅」は始まっていたのだ。

 

つづく。

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